移住の助成金のワナ

移住振興策を図るために各自治体は様々な支援を行っています。起業にかかる改修費を最大半額助成する、中古住宅を購入した場合は購入費の半額を助成するなど・・。でもそれらを鵜呑みにして拙速に移住を図るのは危険です。

某市の移住促進策の一例

若年夫婦世帯（夫婦いずれも40歳未満）子育て世帯（妊婦または18歳未満の子一人当たり）三世代同居世帯の場合はそれぞれ10万円上乗せ。

例えば両親（30代）と子供1人、祖父母と中古住宅（500万円）を購入した場合は・・・

若年夫婦ボーナス（10万円）+子育て世代ボーナス（10万円）+三世代同居ボーナス（10万円）+補助金（50万円）-500万円＝420万円

極端な例ですが、約2割引きで中古住宅が購入できる事になります。だがそれには条件があります。前年度の市民税の未納がないか、暴力団に入っていないか等のほかに見過ごせない条件があります。

助成金受け取りのための条件（一部）

それは以下の条件です。

1. 入居日から5年以上補助対象住宅に入居している事。
2. 町内会に加入する事
3. 要件を満たさない場合は支給を取り消すことがある。
4. 補助金の返還を求めることがある。（5年未満で家族全員が転居した場合）

入居日から5年以上補助対象住宅に入居している事。

この場合、購入した住宅が居住に適さない状況になり、やむを得ず転居する場合も返還の対象になります（天災の場合は除く）また家族の病気などの事情で家を手放さなければならない場合でも同様です。それらを回避するため、購入する前の現状確認が大事になります。見える場所だけではなく、床下や自宅周辺の状況などを時間をかけて観察したほうがいいです。その際には一級建築士などのプロに同行してもらいアドバイスをもらうのもいいかもしれません。また自治体は作成するハザードマップを見て購入予定の住宅が災害などの範囲に入っていないか確かめる事が必要です。

町内会に加入する事

町内会も高齢化が進み、体の具合で加入を拒否したり施設に入所して自宅にいない等、加入人数も少なくなっています。そのため、町内会長などの順番が町内に溶け込む前に回ってくる可能性があります。慣れない土地で町内会の行事の取りまとめや普請の段取りを組むなど精神的な負担が大きい仕事をこなす事になりかねません。自治体の地域課などに町内会の加入人数などを聞いてみるのがいいです。

いきなり移住はリスクが高い

いくら条件が良いからと言って移住先の情報をしっかり検討せずに移住するのは拙速すぎます。そのための準備期間にやる事があります。

①候補地周辺でアパートなどを借りて住んでみましょう

アパートがない場合は、地元の不動産会社で売りに出されている物件を賃貸対応できないか交渉してみるのも方法の一つでしょう。空き家は今のご時世いくらでもあります。野ざらしにしているよりは賃貸で維持費だけでも稼ぎたい、という心理が生まれるかもしれません。家賃についても都市圏に比べればかなり安いです（ちなみに私が住んでいる自治体で一戸建てのアパートの家賃は首都圏の駐車場の賃料より安いです）

②下見は移住する地域の一番厳しい季節に行いましょう

自治体が発行する移住促進のパンフレットより、より濃密な体験ができるでしょう。例えば青森県は厳冬期の1～2月、 夏にはかからない暖房費がどの程度のものか、寒さを和らげるコツ、暖房器具はストーブかファンヒーターどちらが暖かいか、雪の片付け方、雪道の車の運転など・・ 。九州沖縄地域は台風シーズンの9～11月に自宅の補強個所の確認、避難経路や浸水しやすい場所など・・。一番厳しい時期を知らずに移住すれば、家族間のトラブルにも発展する恐れもあり、楽しい移住生活も一瞬で破綻する危険性があります。

終わりに

移住とはある意味未開地に踏み込む開拓民、と言えるかもしれません。見知らぬ土地に希望（定年後のスローライフや起業）をもって赴き、原住民（この場合は地元の住人）のしきたりにカルチャーショックを受けながら、その土地に順応して生きようとする。順応できなければ戦争（この場合は陰口などの嫌がらせや村八分など）になり、数が少ないほうが負けて土地を追われる（大抵は移住者）そうならないために、下見に時間をかけてその土地の情報を収集しなければならないのです。必要とあれば自分の目で。移住を希望する方に参考になれば幸いです。

ありがとうございました。