コロナウィルス騒動で延期になっていた
ツール・ド・フランス(以下ツール)が開催
されています。今年参加チームのうち、
ディスクブレーキを使用しているのは
9チーム、リムブレーキを使用しているのは
わずか3チームとなりました。
昨年総合優勝者 エルガン・ベルナルが
エースのチーム・グレナディアーズ。
9月10日の時点で総合1位のプリモシュ・
ログリッチが所属するユンボ・ヴィスマ。
フランス人の期待を一身に背負うロマン・
バルデが所属するAG2Rです。
9月10日までの9戦のうち、5勝しており、
ディスクブレーキバイクがプロレースの中で
必ずしも有利ではないようだ、というのが
見えてきます。
キャリパーブレーキはパンクなどのトラブル時に有利
ディスクブレーキを使うチームはパンクの
際にホイール交換をする事はほとんどなく、
バイクそのものを交換しているとのこと。
これはディスクブレーキのパッドとディスク
自体のクリアランスの調整がシビアだから。
急いで交換したい時に、少し装着角度が
ずれるだけでパッドとディスクがこすれて
抵抗が生まれてしまえばコンマ数秒の勝負に
勝てずに終わる可能性もあるのです。
キャリパーブレーキはメンテナンスで有利
ディスクブレーキは油圧でブレーキをかける
為、ワイヤーの引きでブレーキをかける
キャリパーブレーキよりメンテナンスに
時間がかかります。オイルの交換時に空気が
混じるとエア噛みと言ってブレーキの効きが
悪くなったり、ブレーキレバーの握りが
スカスカになるトラブルが起こります。
キャリパーブレーキならブレーキワイヤーで
ブレーキを動かすので、ワイヤーのトラブル
は目視で確認できますし、ブレーキレバーの
握り具合の調整も楽にできます。
例えるなら有線でPCを繋ぐほうが、WI-FIに
比べてネット回線が安定するようなものです。
一般道を走るチャリダーにはディスクブレーキがおすすめ
プロがコンマ1秒のしのぎを削るレースに
おいては少しのもたつきが致命的になる為
長年の使用実績もあり、上記の理由から
キャリパーブレーキが一定の地位を未だ
占めているのが分かります。では、日本
の一般チャリダーはどうでしょうか?
日本の一般道の場合、交差点が多いので
必然的にストップアンドゴーが多くなり
ます。そこでブレーキをかける回数が
多い事、車や歩行者などの交通量が多く
障害物を避けるため大きく道路を使え
ないので減速を頻繁にする必要がある事
から制動力が大きく、緊急的な回避行動
に移りやすいディスクブレーキが向いて
いると思います。
長い下りに当て効きがしやすいのもディスクブレーキのメリット
キャリパーブレーキでは長く曲がりくねった
峠の下りでブレーキをずっと使用する
「当て効き」を行うとブレーキシューや
ホイールのリムが摩擦熱で摩耗、最悪リムが
爆発する可能性があります。
ディスクブレーキではホイールのハブに固定
された金属製のローターをレジンやメタル製
のブレーキパッドで挟み込んで減速するので
リムが摩擦熱で爆発する事なく当て効きが
できます。
ただし車でも下り坂などでブレーキを連続
使用すると摩擦材の素材であるゴムや樹脂が
設定された耐熱温度を越えて分解・ガス化
し、ブレーキローターとの間に入り込むと
ガス膜が潤滑剤のような働きを起こして
摩擦係数が低下する「フェード現象」が
起こるように、ロードバイクのディスク
ブレーキにもそのリスクがあります。
SHIMANOの「ICE TECHNOLOGIES」
「アイステクノロジー」はディスク
ブレーキ本来の性能を発揮させるため
冷却技術を駆使して、300〜400℃の
高温でも優れた放熱性能を発揮して
騒音とフェードの軽減を実現しています。
おわりに
キャリパーブレーキ、ディスクブレーキ
ともにメリットやデメリットがあります。
自動車でもマニュアル車からオートマ車
が増え、免許でもAT限定免許が作られる
など、走っている車のほとんどがAT車に
なっても、マニュアル車はスポーツカー
やRV車、大型車の一部に残っています。
どちらかを選ぶときは自分がどのような
目的で使用するのか、「レースなのか、
ロングライドなのか」「軽さを求める
ヒルクライムか」「総合力が求められる
ロードレースか」を見極めて選ぶのが
いいと思います。