前回の記事でUCIが禁止するエアロポジション
「Super Tuck」と疑似エアロバーポジション
を紹介しました。今回、調査機関が風洞実験で
効果を検証した結果、10kmある勾配8%の下り
坂を時速70kmで下った時にエアロポジションと
通常のポジションでは時速5km、30秒差がつく
ことが分かりました!
さすがに一般人には真似は無理です。
Super Tuckの風洞実験の結果
時速50km到達時のパワー | 時速60km到達時のパワー | 時速70km到達時のパワー | ||||
サドルに座ったポジション | 356W | 617W | 979W | |||
トップチューブにまたがったポジション | 308W | -49W | 532W | -85W | 844W | -135W |
(Swiss Sideのデータより)
また、疑似的なエアロポジション、
ドロップハンドルのフラット部に
前腕を水平にのせてリラックスした
体勢についても、同様にタイムの短縮に
繋がる結果が出ています。
疑似エアロバーポジションでも通常のポジションよりいい結果が出た
時速40km到達時のパワー | 時速50km到達時のパワー | 時速60km到達時のパワー | ||||
ハンドルのドロップ部をつかみ腕は伸ばすポジション | 211W | 412W | 713W | |||
ハンドルのドロップ部をつかみ肘を曲げ体を倒したポジション | 200W | -11W | 390W | -22W | 674W | -39W |
ブレーキフードをつかみ前腕をハンドルと水平にしたポジション | 198W | -13W | 387W | -35W | 669W | -44W |
フラット部に前腕をのせたエアロポジション | 188W | -23W | 366W | -46W | 633W | -80W |
空気力学上、Super Tuckや疑似的エアロバー
ポジションは効果ありと言えます。
選手にとって魅力的なテクニックを封じられた。
今回のUCIの決定は選手の安全確保の観点
から行われたものですが、当の選手の中
にはUCIの決定に疑問を投げかけている人
もいるようです。
特に、逃げを得意とする選手にとって、
少ないパワーで少しでも距離を稼いで、
逃げ切るためにこれらのポジションは
魅力的でした。またアシスト選手にとっても
チームの先頭を引くときにパワーを温存
できるテクニックです。これらのテクニック
を使いこなしてこそ、プロ選手だという
自負もあると思います。
UCIの狙いは巻き添え落車による有力選手の離脱回避か
(シクロワイアードより転載)
今回のポジション禁止の他に、からになった
ボトルを指定されたエリア以外で破棄する事
も禁止になります。
これは2020年のジロ・デ・イタリアで優勝
候補だったチーム・イネオスのゲラント・
トーマスが他の選手が破棄したボトルに
乗り上げ落車、そのままリタイアした事が
きっかけです。
前回のブログ記事では危険行為の禁止は
一般のチャリダーが真似して落車した時の
UCIの責任問題回避の狙いがある、と述べ
ました。そのほかに有力選手の巻き添え
落車を回避する事で、チームやスポンサー
に配慮したのでは、と考えます。
選手はジャージにスポンサーの看板を
背負って走っています。有力選手が落車で
離脱すれば、チームがカメラに映る時間も
短くなり、宣伝効果も薄くなります。
成績を残せず、露出も少なければスポンサー
は降りてしまいます。そうなればチーム運営
も立ち行かなくなり、選手の放出、チームが
解散、となってしまいます。このあたりの
事情は「茄子 アンダルシアの夏」でも
語られています。
おわりに
今回の禁止内容で、2021年以降のロードレース
にも変化が現れる事でしょう。